ガガガ文庫まとめ読み。

言葉は悪いけれど、ロミオのついでにガガガ文庫の最初のラインナップをいくつか買ったので感想をば。ネタバレ含みます。


[rakuten:book:12051452:detail]
新興宗教オモイデ教外伝。原田宇陀児。これは前情報見ててなんだか盛り上がってたので買った作品。絵はニトロプラスの人。
はっきり言って失敗でした。文体にアクが強いし、ナルシスト的文章だし、キャラに魅力が無いんですもの。基本的な構成としては、主人公(委員長属性・ただし男子生徒)が色々あって超常現象研究会なんていう団体に入ることになって、学校の怪談の謎を解き明かすためにみんなで夜中の学校に侵入。そこで色々あって仲間が死んじゃって、犯人を探るうちになぜかサイキックバトルに突入するという。そこに花を添えるのは、ベタなドジ巨乳と、ツンデレ貧乳。これだけ揃えれば面白くなりそうなものだけど、変に凝ってだらだら続く文章と、前後の繋がりの不明瞭な会話のせいで台無しになってました。
物語の最後ちょっと前あたりにはどんでん返しもあります。ぶっちゃけた話予想してた通りになってしまったんですが、そうでなくても多分驚かなかったと思います。だってキャラに魅力が無いから、そいつがどんな人間であっても関心ないもの。
エログロ描写もあるんですけど、物足りない。アレじゃダメでしょう、エロもグロも狂気も劣情も伝わってこない。多重人格探偵サイコの脳天花シーンを見たときのような生々しい衝撃が必要だ。
前評判の高さは、大槻ケンヂ氏の作品の外伝であるということからだった、らしい。で、某スレとか見ると、他の作品として読んだほうが面白いかも、と酷評の嵐の中に書いてあったのですが、自分はそもそも元の作品を読んでないので、それで面白くなかったということは、誰に読ませても面白くないということでしょうかな。
見所は絵。


[rakuten:book:12051455:detail]
武林クロスロード。深見真。これはスレで画像が紹介されてて「買いだ!」と叫んだ作品。
期待以上のものでありました。主にエロの面で。ってか子供が読んだらトラウマですよこれ。
女の子が天下一武道会的なもので一番になるために修行の旅に出て、その先で出会った伝説の武道家と共に鍛錬を積みつつ道中出合った悪と戦うみたいな話。普通と違うのは、女性が圧倒的に強い世界であり、男キャラはフラグ立てる前にバンバン死んでいくこと。冒頭一緒に旅に出た男の子が、少し後で首を刎ねられて死んでますから、これは「男はイラネ」というメッセージなのでしょう。あと女性の筋肉が異常。多分こう書いて警告しても、本をめくれば想像以上の世界が待っていると思います。THEガッツとか目じゃない。本当に。
あと先に言及したエロですが、これは文章・絵共にいい意味でアウトなレベル。少年誌に載せたら間違いなく発禁になるようなものが平積みで置いてある恐ろしさよ。直エロっていうかセックスシーンが何回も出てきます。尺は短いですが。「女の子しか出ないのにどうやってするの?」とお思いの方。生えます。生やします。生えてます。つまりそういうこと。
お話としてはややバイオレンス入ったバトルモノで、手堅く纏まってると思います。
性癖が合う人は買って損しない一冊。筋肉女性+レズ+ふたなりが大丈夫なのってすごく狭い範囲の人だと思いますが。大丈夫か小学館


[rakuten:book:12051451:detail]
樹海人魚中村九郎。これは何の前情報も無く適当に買った作品。
主人公にイライラしつつ、途中まではそれなりに楽しめたんですが―――オチが酷い。ラスボスの倒し方が出てきた瞬間完全に萎えてしまった。
お話は、人を襲う人魚と、それを退治するために「人魚を飼いならして使役する」人間の攻防、みたいな感じ。人魚は「殺しても一定条件下で生き返る」という特性持ち(この辺に転生ネタが絡んでくる)で、さらに個別に特殊能力を持っている、とか。他にも色々設定があるんですが、その辺は割愛。
まず、いらないキャラ多すぎです。お姉ちゃんと幼馴染はどっちか一人で良かったのではないですかね。二人一組っつー制約があるのでなかなかアレですが。上司も男と女どっちかで良かったと思います。なーんか、萌えキャラ沢山出したかっただけのような。一人ひとりが薄いです。とくにお姉ちゃん、生かせてないです。うさぎ死にすぎ。
この中村という人、状況説明が下手です。読んでて、あれ?死んだ?とかなってしまいます。

この先酷いネタバレなので一部反転。

先に触れた「オチ」。ラスボスを倒す手段というかなんというか、そんなのが最後に出てくるんですが、それが「実は主人公は人間じゃなく人魚」で、「一度自分を殺したものを無条件で殺せる特殊能力を持っている」から、「前世の自分を殺したことのある」ラスボスを倒せるというオチ。真ん中がメインですが、これ、前振り一つもないので。いきなり出てきちゃったこんな無茶な能力。努力も戦略もクソも無い。そりゃ無いよ。で、今調べたらラノベ板に立ってるスレ、そもそも地雷作家前提になってました。これでも地雷度が薄くなってるらしいです。あー、諸所に見られる詩的な表現は上手いですね。詩的な表現をするために設定作ってる気があるので、そのせいで無茶になってる気がしますが。欠点を埋めるほどではないです。だってね、詩的表現を効果的に用いるなら、文章をちゃんと書かないと。イマイチ一般ウケしてないのはそういう所なんじゃないかと。で、信者と化してる人たちは、その局地的表現一部分だけで満足できる人なのかもしれない。テレビスポットで泣けるタイプとか?
しかしだね、ただ下手なのと、効果的に独特なのとは見分けがつけにくいね。さらに「ただ下手で読みにくい」のを「読んだ」事実に酔って、「万人に受け難い」なんつー言葉で括ってしまう人も多いから。っていうか、ポエム系統ならなんでもやっていいと思ってる人多くない?それ感性を疑ったほうがいいよ。それか国語の教科書読み直せ。いい文章には無駄がないものなんだから。

いまさら書き足しちゃうのは卑怯なのかな。でも言っておきたいな。はてな界隈ではやたらと褒めてる人が多いこの本だけど、その人らの感想って全部同じなのね。独特とか幻想的とか。何も具体的な例出してこないし、それは間違いなく自分の感性に自信がないからだよ。周りがいいって言ってるし、分かりにくいって評判の作者だから、褒めとけば玄人気取りみたいな?



ロミオと武林クロスロードは当たり。
人類は衰退しました」は、世界観の設定がかつて無いほどに素晴らしい。
残りはイマイチ。順番をつけるなら、
人類>武林>樹海>オモイデ
ですかね。